6.112015
もれ聞かせる
こんにちは。奈良県の広陵町にある陽塾の代表・原田基生です。
授業中、子どもたちに問題を解かせたり板書を書かせたりしているときに、わたしは机間巡視をして子どもたちそれぞれが解いている様子を見回ります。
このとき、子どもたちに個別に声をかけますが、この声かけ、実は声をかけられた子以外にも結構影響があるものです。
例えば、授業中にこういう場面があります。
問題演習をするとき、子どもたちに問題を解くように指示し、「答えが出たら手をあげてください。合ってるか見に行きます」と声をかけておきます。
しばらくすると、ひとりが手をあげます。
わたしはその子の席に行き、ノートを覗き込んでその子の解いたあとを見ます。正解ではありません。
「・・・残念。違う」
これだけ言います。
その子は「えぇ~?」などと言いながらもう一度ノートを見直して解きなおします。
個別への声かけなので、その子だけに聞こえるくらいの声の大きさで言うのですが、もちろんほかの子たちにもその声かけは「もれ聞か」れています。
まだできていない子は、「違う」という言葉を「もれ聞い」て、自分が最初の正解者になろうとがんばって解こうとします。
しばらくすると、違う子が手をあげます。
その子のノートを見ると、見事正解でした。わたしは少し大げさに言います。
「おお~。やるな~。合ってる合ってる!」
その子が笑顔になります。
そしてこの言葉を「もれ聞い」た、ほかの子たちはムキになって自分も正解を出そうとします。
教師が集団の教室の中で発した言葉はほかの子たちに「もれ聞か」れているのです。そしてそれは、個人に対してかけた言葉なのに、それ以外の子たちに結構影響を及ぼしているのです。
個人への声かけであっても、みんなの前で声かけをするのか、他の子に聞かれないように別の場所で声かけするのかは、その声かけの内容、その子の性格や現状なども踏まえて、教師は正しく判断しなければなりません。
みんなの前での声かけなら、その言葉をほかの子に『もれ聞かせる』ことを十分に意識する必要があります。
こういうちょっとしたことでも、子どもたちのモチベーションは大きく変化します。
教師の声かけは、子どもたちへの影響力が非常に大きいものなのです。